アドラー心理学と組織マネジメント、お客様との雑談のコツ

目次

人間関係と勇気

アルフレッド・アドラーという心理学者が提唱する心理学では、人の悩みの全てが人間関係からくるもので、それらを克服していくには勇気が必要と説かれています。どんな特徴や思考を持っていても、自分自身でそれらを変えていくことで幸せに繋げていくことができるという考え方です。アドラー心理学では勇気という言葉が特徴的なのですが、なぜ勇気なのかというと、人との関わりにはまず覚悟するという勇気が必要になるからなのです。伝える時でも、自分を変えることに使う意識を行動で実践していく時にも、実は勇気がいるものなのです。

日本の閉塞感

現代の日本に閉塞感を感じる人が増えていることも、アドラーの心理学が見直され、多くの人の共感を得ている理由のひとつでしょう。外の世界が以前よりもグッと近くなり、違いがあるのが当たり前ということを現代になって気付かされている日本です。同じものを好み、違うと疎外感を感じる日本人の特性は今も根付いています。そこに日本の美徳が隠れていることは否めませんが、このことが日本人の主張や意見の乏しさや、交渉力、発信力の無さにも影響を与えているようです。日本人には、変化の勇気がさらに必要とされているのかもしれません。

人材育成への活用

アドラー心理学の再燃を経て、人材育成の分野にもアドラーの考え方を用いる日本企業が増えています。アドラー心理学は「使用の心理学」と言われています。

持って生まれた特徴や個性云々で生きるのではなく、与えられたことを自分の人生にどう生かしていくかが重要だというのがアドラーは説いています。これは、働くひとりひとりの認識だけでなく、組織単位の認識としても当てはまることでしょう。つまり、今の現状をしっかりと認識し、そこから何とかして変わろうと努力していく姿勢が自分や組織をより良く成長させるものとして捉えられ、ビジネスシーンでも有効と見られているのです。

個人レベル
しっかりと自己の価値観を持ち、それを人と刷り合わせたり、比較したりすることなく自尊心を高めることは社会人として無用なストレスを生まないための大切な要素です。評価や評判を気にすることなく、周りの人への貢献に目を向けた生活や仕事をすることを目標とさせます。他者の課題ではなく、自分の課題に集中するというのはアドラー心理学の真骨頂となる部分でしょう。人を変えることではなく、自分が変わることで自分を取り巻く世界を変えていくという信念をもつことも推奨していきます。

組織レベル
現状理解はどんな事業や業務を行う際にも必要になります。限られたリソースの中でもより考え、工夫をし最大限の力の発揮に努めていくことが変化の現代でできることなのです。アドラー心理学では上下関係が否定されています。ビジネスでいう、企業と顧客の関係、上司と部下の関係などが当てはまるでしょう。共同体としてのフラットな関係からもたらされるメリットが尊重されているからです。そのメリットの中でも、誰もがその共同体の中での自分の存在感や意義を実感できるという点が大きなポイントと言えるでしょう。この実感がモチベーションにもんり実績や成果をあげていくために深く組織に関わるエンゲージメントを強固にしていくと言われています。

来客を案内するときや、車や電車で一緒に移動するとき、長時間無言でいるとそっけない印象を与えてしまいます。しかし、正式な商談の場ではないのでビジネスの話も避けるべきです。このような場合には、雑談をして場を和ませることが必要です。本稿ではお客様との雑談のコツを紹介します。

話題選びのコツ

雑談は場を和ませ、相手との関係を円滑にするための手段です。初めて訪問の場合、来客は緊張していることが普通です。こちらから雑談をすることで相手の緊張を和らげ、その後の商談がスムーズに進むきっかけにもなります。
雑談と言っても、どんな話題でもいいわけではありません。話題選びのコツの一つめは、相手が同意しやすい話を選ぶことです。天気の話は同意がしやすいため、雑談に最もよく使われます。コツの二つめは、クローズクエッションとオープンクエッションを上手に使い分けることです。クローズクエッションは相手が「はい」「いいえ」で答えられる質問で、オープンクエッションは相手が自由に答える質問です。「新しくオープンしたレストラン、ご存知ですか」はクローズクエッションで、「おすすめのお店がありますか」はオープンクエッションです。初めての人との雑談ではまずはクローズクエッションから入り、話し好きそうな人であればオープンクエッションに移ります。話が苦手そうな人であれば、クローズクエッションで負担を少なくする配慮が必要です。
最後のコツは、話が短く終わる話題を選ぶことです。雑談は移動中やエレベーターを待っているときなど、短時間で行うことが普通です。長引く話だと、相手が帰るタイミングを逃してしまったり、話が尻すぼみになったりしてしまいます。簡単に始められて簡単に終わる話題を選びましょう。

 具体例

上のコツに基づいて、選ぶべき話題と内容の具体例を見ていきましょう。
-天気
最もよく使われ、間違いのない話題です。数十秒しか時間がない場合にも使えます。
「今日は暑いですね」「日がのびてきましたね」「雨に降られませんでしたか」
-ニュース
みんなが知っているニュースを選びます。政治の話は避けたほうが安全です。
「オリンピックが開幕しましたね」「昨日の地震速報、怖かったですね」
-会社の話題(外観・立地)
自分が会社訪問をしたときに使える話題です。会社の話は外観や立地の話にとどめ、経営の話はしないようにしましょう。
「駅から近くて、便利な場所ですね」「きれいなオフィスですね」
-街の話題
この話題も、自分が訪問する側になったときに使えます。雑談の時間が長めの時は、おいしいお店や、穴場などを聞いて話題を広げましょう。
「近くにおすすめのレストランがありますか」「お昼に向かいのお店に行ってみましたよ」

まとめ

雑談のポイントは以下の通りです。
-状況にあった話題を選ぶ
-プライベートに立ち入りすぎない
相手の状況をよく見れば、雑談のヒントが隠されています。相手が持っている傘が濡れている場合、暑そうにしている場合、キャリーケースを引いてきた場合など、簡単な質問から雑談を始めることができます。
初めて会った相手のプライベートに立ち入ったり、自分自身のプライベートの話をしたりすることは避けるべきです。また、会社のプライベートと言える経営状況や、ライバル会社の話などもしないほうがいいでしょう。付き合いが長くなり、ある程度距離が縮まってきたら、プライベートの話を少しはしてもいいかもしれませんが、相手の性格を考えて慎重に行いましょう。

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